県全体として住宅地の平均変動率が+0.1%(昨年は△0.3%)と23年ぶりにプラスに転じ、商業地は横ばい(昨年は△0.6%)、工業地は△0.3%(昨年は△0.6%)と下落幅が縮小しました。福岡市の住宅地では平均変動率が+2.2%と3年連続で上昇、商業地でも+3.8%と3年連続のプラスになり平成20年以来全区で上昇しました。住宅地では18ポイントが、商業地では25ポイントが+5.0%を超える地価上昇になりました。

 平成27年地価公示(平成27年1月1日時点の価格)結果が発表されました。
 福岡県平均では住宅地で23年ぶりに上昇に転じ、商業地は横ばい、工業地が下落幅が縮小傾向で、福岡市から周辺市町に波及し地価上昇地点が急速に増加しています。北九州市の住宅地でも10ポイントが上昇しました。商業地は8ポイントが横ばいでしたが上昇ポイントはありませんでした。

春ですね

【住宅地】
 ①福岡市の住宅地は戸建住宅やマンションの需要が堅調で、その中でも、早良区(+3.2%)は4年連続、中央区(+4.3%)・西区(+1.7%)は3年連続の地価上昇でした。早良区では9ポイント、中央区6ポイント、城南区2ポイント、南区1ポイントが年率5%を超える上昇でした。そのうち7ポイントが百道中学校及び高取中学校校区でした。
 このエリアではマンションの売れ行きが好調で、優良なマンション素地の取得競争が激しく入札等による高値落札が地価上昇を牽引しました。歴史的な超低金利を反映してエンドユーザーへの売れ行きが好調でした。
 福岡市住宅地の平均変動率▲0.9%(24年)→+0.7%(25年)→+1.8%(26年)→+2.2%(27年)で3年連続の上昇です。
 ②北九州市の住宅地は長期下落で推移している中、下げ止まり・底打ち感が見られ、下落幅は縮小傾向です。北九州市住宅地の平均変動率▲2.6%(24年)→▲2.2%(25年)→▲1.6%(26年)→▲1.2%(27年)でした。 八幡西区の4ポイント、小倉南区の4ポイント、戸畑区の2ポイントが上昇しました。
 ③久留米市の住宅地は昨年16年ぶりにマイナスを脱し±0%でしたが、今回は+0.2%と上昇に転じました。市中心部に近いエリアでは戸建て住宅用地需要が安定。中心部のマンション素地需要も旺盛で、販売も概ね好調です。戸建住宅は、中心部の需要は底堅く、苦戦していた郊外部にも値頃感が出てきて需要は回復傾向が続いています。新築戸建は総額2,000~2,600万円のミニ開発が活発化しています。久留米市住宅地平均変動率▲2.1%(24年)→▲1.5%(25年)→±0.0%(26年)→+0.2%(27年)でした。
 ④筑紫野市、大野城市、春日市、太宰府市、那珂川町の旧筑紫郡の市町はすべての市町でプラス、その他筑後市、古賀市、福津市、志免町、新宮町、粕屋町の9市4町(福岡市含む)が住宅地で上昇しました。福岡市のベッドタウンとして需要は多く、地価は底堅く推移しています。また中古住宅の取引も活発化しています。
・その他
  大牟田▲3.7%(24年)→▲3.8%(25年)→▲3.4%(26年)→▲2.7%(27年)
  飯塚市▲3.2%(24年)→▲3.2%(25年)→▲3.0%(26年)→▲2.5%(27年)
  柳川市▲3.2%(24年)→▲3.1%(25年)→▲2.6%(26年)→▲1.9%(27年)
  筑後市▲1.6%(24年)→▲1.1%(25年)→+0.7%(26年)→+0.4%(27年)
  行橋市▲2.0%(24年)→▲1.5%(25年)→▲0.8%(26年)→▲0.2%(27年)
  宗像市▲3.0%(24年)→▲2.5%(25年)→▲1.1%(26年)→▲0.9%(27年)
  朝倉市▲5.5%(24年)→▲4.7%(25年)→▲3.1%(26年)→▲1.7%(27年)でした。
筑後市は2年連続で上昇、他の都市も縮小傾向でした。

高層マンション群
デザイナーズマンション

【商業地】
 ①福岡市の商業地は、博多駅と天神界隈の両都心部を中心に、上昇の範囲及び上昇幅が拡大中です。JR博多シティの開業と九州新幹線全線開業で福岡市の拠点性と駅周辺の集客力増加に加え、博多郵便局跡(丸井入居ほか)と博多ビル跡地(JR九州主体のオフィスビル)での再開発が工事中であることや地下鉄七隈線の博多駅への延伸計画とも相俟って博多駅前地区の将来に対する期待感があり引き続き上昇。天神地区では新規店舗の出店が続くなど、店舗集積度は高まっており、外国人観光客の下支えもあり売上高も回復基調にあり、天神地区への一極集中が続いています。収益物件や事業用不動産が高価格で取引されるなど一等地は昨年に引き続き強い動きを示しています。またJリートが取得を活発化させ、外資も含めて需要は旺盛です。しかし売り物件が枯渇気味で、物件取得が困難な状況が看取されます。
 福岡市商業地の平均変動率▲1.6%(24年)→+0.7%(25年)→+2.9%(26年)→+3.8%(27年)で3年続けての上昇でした。
 ②北九州市は、消費が福岡市へ流出しており、やや下落傾向が継続しています。但し、商業地でマンション適地の土地は高値取引も見受けられます。既存の商店街は各区とも依然として下落傾向です。北九州市商業地の平均変動率は▲4.1%(23年)→▲3.4%(24年)→▲2.8%(25年)→▲2.2%(26年)→▲1.5%(27年)でした。
 ③久留米市は▲6.0%(23年)→▲3.5%(24年)→▲1.8%(25年)→▲0.5%(26年)→+0.1%(27年)と上昇に転じました。要因としてはマンション素地の需要の増大や再開発事業の進展に対する期待を受け僅かにプラスに転じました。
  飯塚市 ▲6.2%(24年)→▲5.9%(25年)→▲4.8%(26年)→▲4.2%(27年)
  柳川市 ▲5.1%(24年)→▲4.7%(25年)→▲4.5%(26年)→▲3.8%(27年)
  筑後市 ▲5.0%(24年)→▲4.1%(25年)→▲2.1%(26年)→▲1.7%(27年)
  行橋市 ▲4.2%(24年)→▲2.8%(25年)→▲1.5%(26年)→±0% (27年)
  宗像市 ▲2.1%(24年)→▲1.5%(25年)→▲0.9%(26年)→▲0.5%(27年)
  朝倉市 ▲4.6%(24年)→▲5.8%(25年)→▲4.5%(26年)→▲3.5%(27年)
  大牟田 ▲4.4%(24年)→▲4.3%(25年)→▲3.8%(26年)→▲3.6%(27年)でした。
行橋市が横ばい、その他のいずれの都市も変動率は縮小傾向でした

価上昇が著しい商業地

【工業地】
 工業地は、自動車産業の高操業等の影響や物流施設用地への需要増大により、緩やかながらも工業地の売却が進展している状況で、全体としては下落幅は縮小傾向にあります。九州産業経済局によると、平成26年上期の工場の立地件数46件(前年同期比+28%)、立地面積105.3ha(同△26%)と件数は増えましたが、面積は減少しました。
平均変動率の推移は▲2.7%(24年)→▲1.8%(25年)→▲1.0%(26年)→▲0.3%(27年) でした。
*地価公示結果による最高価格地
 住宅地:福岡中央2  大濠1丁目   566,000円/㎡(+6.0%)
 商業地:福岡中央5-9 天神1丁目  6,230,000円/㎡(+5.2%)

*地価公示結果による上昇率1位
住宅地:早良27 高取2丁目    305,000円/㎡(+11.3%)
商業地:博多5-1  博多駅前3丁目 2,990,000円/㎡(+10.3%)

*現在の特徴的な動きとしては、金余り・低金利・株高による資産効果等を背景に、投資物件への需要は旺盛で、優良物件は品薄状態です。地価上昇地域も拡大傾向であり、久留米市は住宅地、商業地共にプラスに転じました。都心部の物件が品薄状態なのと、マンション適地の上昇しすぎから、需要は利便性が高い鉄道駅近接の周辺市町村への需要が急拡大中です。既にバブルの様相を呈していると言われる関係者の方も多く、更に慎重な見極めが必要な時期に来ているようである反面、買わなければいけない業態の会社も多く、また築年が古くなった資産を売却し、築浅の物件を求める需要も多いです。好調だったマンション市場では素地の取得の困難さや建築費の高騰、消費税10%への増税も控えており、供給の多さや販売価格の値上げも相俟って、マンション市場については不透明感がででくると思います。
 地価の安定的な推移には、個人の所得環境の好転や地場の企業収益の改善が必要です。