県全体として住宅地、商業地、工業地すべての用途で下落率は縮小し、福岡市の住宅地では平均変動率が+1.8%商業地でも+2.9%と2年連続のプラスになり、住宅地では19ポイントが、商業地では17ポイントが+5.0%を超える地価上昇になりました。

 平成26年地価公示(平成26年1月1日時点の価格)結果が発表されました。
 福岡県平均では住宅地で22年連続の下落、商業地で6年連続の下落でしたが、下落率は工業地も含めて縮小傾向にあり、個別には福岡市のみならず周辺市町に波及し地価上昇地点が急速に増加しています。


【住宅地】
 都心回帰傾向にある中で、福岡市の住宅地は戸建住宅やマンションの需要が堅調で、その中でも、早良区(+3.3%)は3年連続、中央区(+3.4%)西区(+1.6%)は2年連続の地価上昇でした。早良区では14ポイントが年率5%を超える上昇でした。そのうち11ポイントが百道中学校及び高取中学校校区でした。
  歴史的な超低金利を反映して総額3,000~3,500万円前後の新築住宅がよく売れています

 また、都心部のみならず都心近郊のマンションの売れ行きも好調で、マンション業者の素地の取得競争が激しく地価上昇を牽引しました。中古住宅の売れ行きも好調で、特に鉄道沿線はよく売れていました。分譲マンションは中心部からやや郊外に広がりをみせております。
 福岡市の住宅地の平均変動率▲1.9%(23年)→▲0.9%(24年)→+0.7%(25年)→+1.8%(26年)で2年連続の上昇です。
 北九州市の住宅地は長期下落で推移している中、下げ止まり・底打ち感が見られ、下落幅は縮小傾向です。
 北九州市住宅地の平均変動率▲3.2%(23年)→▲2.6%(24年)→▲2.2%(25年)→▲1.6%(26年)でした。なかでも八幡西区の4ポイントがプラスに転じました。
 久留米市の住宅地は16年ぶりにマイナスを脱し±0%でした。市中心部に近いエリアでは取引は活発です。特に中心部のマンション素地需要は旺盛で、販売も好調であり、高値取引も見受けられます。戸建住宅は、中心部の需要は底堅く、また苦戦していた郊外部にも値頃感が出てきて需要は回復傾向です。
新築戸建は総額2,000~2,600万円が需要の中心です。
久留米市住宅地の平均変動率▲2.8%(23年)→▲2.1%(24年)→▲1.5%(25年)→±0.0%(26年)でした。

 筑紫野市、大野城市、春日市、太宰府市、那珂川町の旧筑紫郡の市町はすべての市町でマイナスを脱し0~プラスに転じました。福岡市のベッドタウンとして需要は多く、地価は底堅く推移しています。また中古住宅の取引も活発化しています。その他の主な都市の動向は次のとおりです。
 大牟田市▲3.8%(23年)→▲3.7%(24年)→▲3.8%(25年)→▲3.4%(26年)
 飯塚市 ▲3.4%(23年)→▲3.2%(24年)→▲3.2%(25年)→▲3.0%(26年)
 柳川市 ▲3.7%(23年)→▲3.2%(24年)→▲3.1%(25年)→▲2.6%(26年)
 筑後市 ▲2.1%(23年)→▲1.6%(24年)→▲1.1%(25年)→+0.7%(26年)
 行橋市 ▲2.4%(23年)→▲2.0%(24年)→▲1.5%(25年)→▲0.8%(26年)
 宗像市 ▲4.1%(23年)→▲3.0%(24年)→▲2.5%(25年)→▲1.1%(26年)
 朝倉市 ▲6.1%(23年)→▲5.5%(24年)→▲4.7%(25年)→▲3.1%(26年)
でした。筑後市は地価上昇に転じ、他の都市も縮小傾向でした。筑後市は今後ホークス2軍誘致の地価への影響がどうなるか、今後の推移及び上昇の広がりが期待されます。

【商業地】
 福岡市の商業地は、博多駅と天神界隈の両都心部のほか、西新、千早・箱崎、高宮・大橋、鳥飼・姪浜地区等で地価が上昇しました。JR博多シティの開業と九州新幹線全線開業で福岡市の拠点性と駅周辺の集客力増加に加え、博多郵便局跡(丸井入居ほか)と博多ビル跡地(JR九州主体のオフィスビル)での再開発計画が発表されたことから博多駅前地区の将来に対する期待感があります。天神地区ではバーニーズNYやH&M、フォーエバー21の出店のほか、パルコの増床計画(建築中)や西鉄ソラリアビルの改装計画があり、また客足も増加し売上高も回復基調にあることから、収益物件や事業用不動産が高価格で取引されるなど一等地は昨年に引き続き強い動きを示しています。またJリートが取得を活発化させ、外資も含めて需要は旺盛です。
 福岡市商業地の平均変動率▲3.9%(23年)→▲1.6%(24年)→+0.7%(25年)→+2.9%(26年)で2年続けての上昇でした。
 北九州市は、消費が福岡市へ流出しており、取引も停滞、賃料も下落傾向にある等、先行き不透明感があり、依然として下落傾向です。現時点で格別の要因はなく停滞感が引き続きあります。北九州市商業地の平均変動率は▲4.1%(23年)→▲3.4%(24年)→▲2.8%(25年)→▲2.2%(26年)でした。
 久留米市は▲6.0%(23年)→▲3.5%(24年)→▲1.8%(25年)→▲0.5%(26年)と下落していますが、マンション素地の需要回復を受けて大きく縮小しました。その他の主な都市の動向は次のとおりです。

 大牟田市▲4.9%(23年)→▲4.4%(24年)→▲4.3%(25年)→▲3.8%(26年)
 飯塚市 ▲6.4%(23年)→▲6.2%(24年)→▲5.9%(25年)→▲4.8%(26年)
 柳川市 ▲6.5%(23年)→▲5.1%(24年)→▲4.7%(25年)→▲4.5%(26年)
 筑後市 ▲5.5%(23年)→▲5.0%(24年)→▲4.1%(25年)→▲2.1%(26年)
 行橋市 ▲4.6%(23年)→▲4.2%(24年)→▲2.8%(25年)→▲1.5%(26年)
 宗像市 ▲2.5%(23年)→▲2.1%(24年)→▲1.5%(25年)→▲0.9%(26年)
 朝倉市 ▲6.2%(23年)→▲4.6%(24年)→▲5.8%(25年)→▲4.5%(26年)
でした。いずれの都市も縮小傾向でした。

博多駅前再開発エリア(JR九州、日本郵政)
JR博多駅
JR小倉駅

【工業地】
 工業地は震災復興需要や自動車産業の急回復、太陽光発電用地としての需要等から、下落幅は縮小傾向にあります。九州産業経済局によると、工場の立地件数38件(+80%増)、立地面積151.1ha(+480%増)と大幅な伸びを示しました。平均変動率の推移は<br />▲3.0%(23年)→▲2.7%(24年)→▲1.8%(25年)→▲1.0%(26年) でした。

*地価公示結果による最高価格地
 住宅地:福岡中央 2  大濠1丁目   534,000円/㎡(+3.1%)
 商業地:福岡中央5-9  天神1丁目 5,920,000円/㎡(+2.4%)

*地価公示結果による上昇率1位
 住宅地:早良 31    西新2丁目  315,000円/㎡(+6.8%)
 商業地:博多5-1    博多駅前3丁目   2,710,000円/㎡(+10.2%)

*現在の特徴的な動きとしては、金余り・低金利・株高による資産効果等を背景に、投資物件への需要は旺盛で、優良物件は品薄状態です。商業地は売り手市場になっており、取得する必要がある需要者以外では慎重な行動をとる傾向が出てきております。またマンション素地の取得競争も激しく、中央区、早良区の地下鉄沿線を中心としたエリアでも物件が少なく、希少性は高まる一方です。各社とも用地取得が厳しくなっており、マンション販売は地場業者を中心に郊外化が進むと思います。建築費の高騰や、消費税増税もあり、マンション市場については今後不透明感がででくると思います。今後の地価の安定的な推移には、個人の所得環境の好転や企業収益の改善が必要で、マンション販売価格、戸建て住宅販売総額、オフィス賃料設定や需要の見極めが難しい状況になりつつあります。

不動産鑑定士 吉田稔