6月に国土交通省の地価調査課より高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート:令和2年1月1日~令和2年4月1日)が発表されました。調査内容は不動産鑑定士が調査対象地区の不動産市場の動向に関する情報を収集するとともに、不動産鑑定評価に準じた方法により地価動向を把握し、その結果を国土交通省において集約する。とあります。実際は一般財団法人に調査を委託して実施されています。

レポートによりますと、
①福岡市中央区大濠地区:結果は0~3%下落(前期は横ばい)
(3月に入りデベロッパーもマンションの販売活動を抑制し始め、新規の用地取得についてはこれまで以上に慎重になっており、中には完全に用地の新規取得を停止したデベロッパーもある。こうしたことから、取引価格は下落傾向となっており、高止まりが続いていた地価動向はやや下落で推移した)

マンション用地は超低金利を背景に異常なほどの高値になり、それに伴って販売単価もうなぎ登りで、この2~3年で多くの在庫を抱えることになりました。取得前の事前の設計も1~2年以上前に90%減で、すでにピークアウトしてかなりの期間が経過しています。ピークアウトしてからも高値取引はしばらく続き(マンション業者は買い続けなければならないまたは業態変化しなければならない)マンションが売れないのに買い続けるジレンマがあったことでしょう。用地取得を半減したあるいはマンションから 撤退したデベロッパーさん、業態変化を遂げられたデベロッパーさんが続出しました。
したがって総合評価が0~3%下落、下落率は別にして下がった判断ですので、上記傾向 が反映されているいる結果といえます。

大濠公園
大濠公園
大濠の最後の花火大会
大濠の最後の花火大会

全国の結果を参考までに紹介いたします。(札幌、仙台、広島、世田谷)

②札幌市中央区宮の森地区:結果は横ばい(前期0~3%上昇)
(標準的な購買力を超えた販売価格で期分けして発売戸数の調整で価格維持している。販売ペースは鈍化、モデルルーム来場予約は激減、大量の在庫増加が懸念される。)

新規事例がない、前期が0~3%プラスなので、結果は横ばい回答なのでしょうが、 コメントからは大濠と同じでマイナスでしょう。

北海道大学キャンパス
北海道大学キャンパス
札幌市時計台
札幌市時計台

③仙台市青葉区錦町地区:結果は3~6%上昇(前期3~6%上昇)
(販売ペースの鈍化が見られるが、幅広い需要に支えられ成約率は安定している。開発素地の供給は限定的でデベロッパーの取得意欲は旺盛である。また在京投資家、地元投資家の堅調な需要に特段の変化は見られなかった。但し、需要者が新型コロナウイルスによる影響を見極めようとする姿勢が見られるようになっており、このような姿勢の変化の兆しが今後の地価動向にどのような影響を及ぼすかについては注視が必要である。)


前期と同じく上昇3~6%上昇??仙台独特なのか、変化の兆し?で変化はしていないのでしょうか? 前期と同じ上昇率はないような気がしますが!
調べてみますと、仙台市の感染者が昨日までで累計で66名(福岡市は389名)で3月末まではあまり影響がなかったのでしょうね。それにしてもすごい上昇率です。

仙台空港
仙台空港

④広島市中区白島地区:結果は0~3%上昇(前期0~3%上昇)
(新型コロナウイルス感染拡大前までは収益物件に対する需要は旺盛で、当期に事例は把握できなかったが、需要は変わらずと認められる点では前期と同じである。当地区はブランド力がある住宅地であることに加え、新白島駅の開業効果が定着し、売買、賃貸双方の根強い需要が続くことが見込まれる。但し、新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、実体経済のへ影響を現段階で推測することは困難であるめ注視が必要。)

広島市は感染者数は累計で84名(福岡市は389名)であり、仙台市と同様に3月末まではあまり影響がなかったのでしょうね。但し事例が把握できていない点や感染者数が少ないからといって新しい生活様式になりこれが当面は変わることはないので、前期と同じペース?ではないような気はしますが。

広島市京橋川
広島市京橋川

⑤世田谷区二子玉川地区:結果は横ばい(前期0~3%上昇)
(複数路線が乗り入れる交通利便性も相俟って底堅い住宅需要が認められるエリア。前半は上昇傾向であったが、後半は新型コロナウイルスの影響により取引等が停滞し周辺商業地も含め横ばいとなった。

上がっていたけど3月は下がってトータルで横ばいとのことです。先行き不透明、感染症の影響を注視したいなどとあり、実際は後半のマイナスがかなり強そうです。

世田谷区役所
世田谷区役所
東急世田谷線
東急世田谷線
目黒不動尊
目黒不動尊

*大濠地区の住宅地の地価動向について札幌、仙台、広島、福岡の地方中核都市及び東京世田谷区の二子玉川を比較してみました。

福岡だけが下がっていますが、札幌、二子玉川は横ばいで新型コロナの影響を注視とありますので、実勢はおそらく下がっていると思います。

それにしても感染者数が少ない仙台、広島は上がっていることに驚きました。広島に至っては上昇が止まってよくて横ばいという話を聞いていたからです。事例が把握できないことは取引がないだけで実質はマイナスに近い0ではないでしょうか。

地方中核都市の札幌市、仙台市、広島市、福岡市は地価動向や水準について、最高価格地の商業地や住宅地などが四市でよく比較されます。早く、東京、大阪、名古屋、福岡と四大都市圏として比較されたいものですね。

株式会社第一鑑定リサーチ
不動産鑑定士 吉田 稔